リンクのぺーじ(6)

NO.18  GPS測量による、「登記基準点概念について

土地家屋調査士は、不動産(ここでは、土地)の表示に関する登記について専門家であると共
に、「有資格者」です。類似資格者に「測量士」があります。測量士と土地家屋調査士とは、土地の
測量に関わる立場が多少異なりますが、測量の到達目標が何かということを考えて行けば、究極
的には一致するかも知れません。現在測量に関しては、国土交通省により電子基準点網が整備さ
れかつ、測量法や公共測量作業規程等も改正され、一級GPS測量機やトータルステーション等
の、大変性能が良く、扱い方もそれほど難しくない機械が普及することで、不動産(土地)の測量
に関し、土地家屋調査士の立場から、積極的に提言し、土地家屋調査士の測量の良さをアピール
する手段として、GPS測量による「登記基準点」が有りはしないかと思うところです。

GPS測量による「登記基準点」の要件
 1.世界測地系座標値をもつこと
 2.1級基準点の精度をもつこと
 3.筆界測量の基準点として、地籍図(または不動産登記法第17条地図)の細部図根点と同等以
  上の相対的精度をもつこと

これらの要件を兼ね備えた点を、GPS測量による「登記基準点」と言うことにしたらどうでしょう
か。
土地家屋調査士の一筆地測量において、一番求められるのは、近くに2点以上、信頼できる
「登記基準点」があることです。できれば、それらの点同士視通があることです。地物や地形の関
係で、GPS測量によっても、難しいこともありますが、考え方によっては難しくありません。
 次の表は、
地積調査作業規程準則および同運用基準(第34条関係-別表第19)です。之により、
先の、要件の第3について考えます。
 
別表第19 
放射法により求めた細部図根点の点検の較差の制限

精度区分 甲1 甲2 甲3 乙1 乙2 乙3
較差の制限 40mm 60mm 100mm 120mm 160mm 200mm

一見大きいように思えます。これは「公差」であって、「標準偏差」はその3分の1であるとしますと、
次のようになります。

 登記基準点間の相対的な誤差の標準(標準偏差):F

精度区分 甲1 甲2 甲3 乙1 乙2 乙3
13mm 20mm 33mm 40mm 53mm 66mm

之なら、電子基準点のみを既知点とした一級基準点測量の方法に依った場合、通常の条件であ
れば、甲1の精度
の、あまり条件がよくない時でも甲2、甲3の精度の確保は、難しいことではありま
せん。一筆地測量において、「登記基準点」の相対的精度が、上記のごとく許容されるなら、「登記
基準点」としての、上述の一級基準点は、ニ〜四級の基準点を機能上兼ね
ることが可能で、特に
「電子基準点のみを既知点とするGPS測量による、ニ〜四級基準点」は、特に必要でないことにな
ります。公共測量作業規程において、電子基準点のみを既知点とする方法は、当面、一級基準点測
量の方法のみ
とされています。

 このように考えますと、1台の一級GPS測量機により、電子基準点を利用して作った一級基準点
は、点間距離が50m以下であるような、極端に短い場合を含む、たいていの場合、「登記基準点」
としての要件を満たすことになります。もちろん、
視通がある限り、この「登記基準点」間距離を長く
取る方が、相対的精度(100分比)が上がりますので、実用性も考慮して、点間距離は、
3級基準点
の点間距離を標準とする
のが理想的です。
  2004.1.14  2004.2.9

NO.19 「登記基準点」にも等級(?)がある?!

あるようです。しかし、これには幾つか条件があります。基本的には、以下のとおりです。但し後
述(NO.20 )するように、別な方法もあります。

条件1 一級GPS測量機を使用し、電子基準点のみを既知点とすること
      (測量機の台数は1台で良い)
条件2 観測する衛星は、5〜6個以上(多いほど良い)とすること
条件3 観測時間は下記を標準とすること

条件4 電子基準点は3〜4個以上の使用を標準とすること

登記基準点 一級(?) ニ級(?) 三級(?) 四級(?)
観測時間 120分以上 90分以上 60分以上 40分以上

以上です。ご承知のように、ニ〜四級(?)については、国土交通省の公共測量作業規程に於い
て、一級基準点測量の方法として、公認されている方法ではありません
。しかし、実用的には、
一級(?)の場合より多少精度が落ちるとしても、それほどでなく、また失敗観測となる危険性が、
それほど高くなるわけでもありません
各級とも、一級基準点の精度は十分に持っています
相対的精度が、NO.18で述べた精度区分で、三〜四級(?)の場合、1ランク程度下がるくらいです。
之には少し理由があります。ソフトウエアに於いて、観測時間が短くても、多少基線解析の精度
は落ちますが、解析できる方法
 が、別に用意されていることです。もちろん、各級とも、一級の
基準点測量の場合と同じ方法で、
精度管理が出来ます
 
 お気づきのように、この場合の「登記基準点」の等級の考え方は、従来の基準点の等級の考
え方とは、全然異なります

    2004.1.28  2004.1.31

NO.20 NO.19 で述べた方法以外で「登記基準点」を設置する方法について

1、 ニ級GPS測量機が使用できます。但し受信機の台数が3〜4台以上必要です。3〜4台以上
  を使用し、節点を設ける必要があります。
2、 電子基準点以外に、前項で設けた節点をも既知点とすることができます。当然、受信機の
  台数は3〜4台(電子基準点から半径10km以内であれば、2〜3台)以上必要です。
 このように、3〜4台以上の受信機を使用すれば、ニ級GPS測量機が有効です。また、既知
 点として節点を利用する場合は、予め、決められた一級基準点測量の方法により、使用し易い
 場所に設置しておくことが有効です。こうしておけば、以後の測量では、この節点だけを既知点と
 することも可能になります。
 
 なお、お気づきのように、この場合も、既存の三角点等は使用していません。 従って、電子基準
点のみを既知点とする一級基準点測量
の方法と同じく、仮定三次元網平均計算は省略し、実用網
平均計算を行い、電子基準点から電子基準点を結合する路線、又は電子基準点から既知点(節
点)を結合する路線、又は既知点(節点)から既知点(節点)を結合する路線に於いて、閉合差を点
検する
方法で、精度管理が可能です。

 蛇足ですが、GPS測量による「登記基準点」の精度(位置誤差の標準偏差)は、最寄の電子基
準点を基準にして数cmです。通常の四等三角点の精度(位置誤差の標準偏差)は15cm程度だと思われます。従って、既存の三角点成果は、改測三角点である場合を除き、「登記基準点」設置のためには、使用しないほうが良いと思われます。
    2004.1.30